[ 恋愛方程式 ]


 先ずは告白でしょ?
 それから、交換日記して一緒に下校して、手とか繋いだり?
 日曜日にはデートして、
 お誕生日とかクリスマスとかにはプレゼントあげて、バレンタインは勿論手作りチョコをあげて。
 それから―――あとは雰囲気だよね……?
 それが、恋愛の順序っていうものじゃないの??

 * * * * *

(うー、頭痛い……)
 今日は朝から調子が悪くて。
 でも今日は三年生と最後の試合が出来る日だから、どうしても部活だけは出たかった。だから、みんなには平気なフリをして放課後までは何とか持ったけど……
(ここは保健室? っていうことは倒れちゃったんだ……私)
 クジを引いて対戦相手が決まって、私の相手はミクスドで夏までパートナーだった不二先輩だった。
 先輩とはランキング戦では当たったことはなかったし、休日練習では乾先輩が考えてくれた練習メニューに付き合ってもらっていたから、不二先輩とは今日が初めての試合。先輩との初めての試合が嬉しくって、調子が悪かったこともつい忘れちゃって……。最後に覚えてるのは誰かの「危ない」って声だけで、それから記憶がない。
(今、何時だろう? もう部活終わっちゃったかなぁー)
 重い頭を少し動かし、なんとか起き上がろうとするけど起きれない。
 その動作を数回繰り返してると、誰かの話し声が聞こえてきた。まだ正常に働いていない頭だけど、それは告白の言葉だってことが分かった。
(うわっ、告白だよぉ。確かにここは保健室で、雰囲気はちょこっとあるけどさ)
 出来ればきちんと確認してほしかった。私が寝てるということを。
(他人の告白現場にまさか立ち会う?なんて思ってもみなかったよ)
 ここは静かにしてるのが一番。あの人だって聞かれてるって思ってもないだろうし……。そう思って、とりあえず耳を塞いで、早く終わってくれますように・・と思っていたら、今度は告白相手の声が聞こえてきて…… 「………めん。ボク、好きな子いるんだよね」
 そう答えたのは、私のよく知ってる人の声。
(え? 不二先輩……?………っ…)
 告白されていたのはどうやら不二先輩みたいで。
 先輩はモテるし、告白だって何人・・ううん何十人からもされてるって朋ちゃんから前聞いたことがあるから別に驚くこともないんだけど。でも、まさかその現場に居合わせるなんて……それに、このズキンときた胸の痛みは何なのだろう―――
「それじゃ、失礼します」
「うん」
 あっ。ヤバイ! 先輩がこっちに来るっっ!
 私が色々考えてる間に告白タイムは終わったみたいで、先輩が私の寝ているベッドに近づいてくる気配がして、私は目を瞑り寝たフリをした。
(どどどどうしようっ)
 なんだか見られてる気がする。でも! 今更「実は起きてました〜」なんていえるはずもないし。
 先輩の告白シーンを聞いてしまったという罪悪感と、ズキンと痛む胸と、この見られてるっぽい感じの視線とで、私の鼓動は忙しく働き始め、先輩に聞こえてしまうんじゃないかと思うくらいドキドキしている。
「ふぅ。そろそろボクの気持ちに気付いてくれてもいいんじゃない?」
 そう先輩が呟き、そして私の唇に一瞬何かが触れたような……
(え? なななななにが……)
 私がパニックになっていると、先輩からの視線がなくなりカーテンを引く音、そして扉の開閉の音がして先輩が部屋を出たということが分かった。
「い、今のはなに……?」

 唇に触れたのは何だったのか。
 先輩の言葉の意味は?
 この二つだけが熱でまだぼーっとしている頭にリアルに残った、13歳の2月9日の出来事―――

 * * * * *

 あれから一年。
 カレンダーを見て思い出すのはあの日の出来事――
「先輩っ!」
「ん? なに?」
「あっあの時、キキキキスしましたねっっ!」
「クスっ。今頃気付いたの?」

 あの時までは先輩は先輩でしかなかったはずなのに。
 あの日から始まった私の恋。

 予想と現実が全く違ったり、予期せぬ出来事が起こったり。
 "恋"って数学みたいに簡単にはいかないんだ……ということを学んだ14歳の初春―――

-fin-



お題作品:「私的夢100題」より

お世話になっている和さんより、サイト開設3周年記念のお祝いとして頂きました!
ありがとうございます!!お祝いのお言葉だけでも嬉しいのに、こんな素敵な小説を!!(感涙)
不二です。私の大好きな不二ですv
サラッとキスしちゃうところが萌えましたvそれに動揺する巴が可愛いですvv(*^^*)
その記念すべき日が、このサイト開設日と同じ2/9だなんて!最高ですvv

和さん、素敵SSありがとうございました!!


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