<きみを追いかけて>


『絶対、リョーマくんに追いついてみせるからね!』
寺のコートで軽く打ち合った後。
アイツは今日もそう言った。
でも・・・追いかけているのは俺の方だ。

    〜*〜*〜*〜

あの全国大会の熱さがまだ残っているのかもしれない。
そう思わせるような、秋と呼ぶにはまだ暑いある休日の午後。
先輩に付き合った買い物の帰り。
近道をしようと裏口から入る。
通りかかった庭は、少し前に母が水でも撒いたのだろう。
草木がキラキラと光ってまぶしかった。
そんな中、縁側で気持ちよさそうに眠るアイツをみかけた。
さすがに眠ってる時は静かだな、なんて思いながら近づく。
俺に気づいて、アイツの傍で寝ていた愛猫が目を覚ました。
「しーっ」
人差し指を立ててそっと口に当てる。
愛猫は大きく伸びをすると、台所の方へ歩いていった。

もう一度、アイツに視線を戻す。
「こんなとこで寝てると、風邪ひくよ?」
軽く体をゆすってみるが、一向に起きようとはしない。
子供のように眠り続けるアイツを横目にため息をつく。
「まだまだだね。」
その時、アイツは甘えるような声で言った。

「・・・せんぱい・・・」

小さい声だったけれど、名前ははっきり聞きとれた。
テニス部の元先輩で、“天才”と呼ばれる男。
同時に俺の胸にちくりとした痛みを感じる。

目の前には、少し頬を赤らめた幸せそうな顔。
俺には見せたことのない表情・・・
胸の痛みはもやもやしたものに変わり、大きくうずまいた。

「俺は・・・お前が・・・」

ゆっくりと顔を近づける。
そしてアイツの唇にそっと自分の唇を重ねた。

    〜*〜*〜*〜

俺がキスしたことをアイツは知らない。
そのことを知ったら、二人の距離は縮まるだろうか。
それともますます離れてしまうだろうか・・・
今はまだ遠いアイツ。
でも。
「絶対、お前に追いついてみせるから。」





お世話になっているにょろさんより、またまた頂きました!R&D小説第2作だそうです。
以下、にょろさんのコメントを引用させていただきます。

『今度はリョーマです。 やっぱり片思い。(またか!)
でもそこはリョーマらしく、諦めない感じにしてみました。
また一文の短さもリョーマらしいかな、と。
そして主人公ちゃんの想い人はアノ人です。
部長でもよかったんですけど、アノ人とリョーマの方が対照的かなって。
季節的な設定はちょうど今頃です。
しかし越前家の構造が適当すぎですね・・・』


とのことです。

リョーマが片想いで、実は主人公は別に想い人が!!何だかこういう設定も萌えますね(*^^*)
しかもその想い人があの天才少年というところが個人的にかなりツボですv(笑)
唇を奪ってしまうところでは、もうドキドキしちゃいました(*/∇\*)
諦めないところが負けず嫌いのリョーマらしくて、最後はスッキリしました!青春です!
頑張れ、リョーマ!

にょろさん、素敵SSありがとうございました!!


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