前見たときには何も思わんかったと思うのに。

今となったら強い怒りがあふれてしまうんや。



刃物



ある日の帰り、俺は水無月ちゃんを見かけた。
ラッキーと思って、声かけようとしたんや。

「水無月ちゃ・・・・」

けど、俺の声はそこで止まった。
何でかって?
それはなあ・・・隣に・・・・。

「えー、そうなの?」

隣でいつもみたいに笑ってる水無月ちゃんと・・・・・

「・・・ああ。」

「葉月君らしいね。面白いな♪」

「・・・そうか・・・。」

ガッコじゃ見せないような笑顔で・・・葉月が水無月ちゃんの隣をとっていた。
かなりええ雰囲気だったから俺が声かける隙もなくって。
俺の手は空中を虚しく漂ったんや。

・・・・ま、ええわ。俺だって何人もの女の子と帰ってるし。

俺は自分にそう言い聞かせて帰ろうとした。
それでくるっと後ろを向くと、藤井がいたんや。

「ねえ姫条。一緒にかえろ?」

俺はあいまいな返事出したわ。
藤井と帰ってる間も笑顔の水無月ちゃんと葉月が浮かんで。

何はなして帰ったかも上の空だったみたく、さっぱり覚えてらんわ。

家帰ってからも、湯でやけどするわ布団入っても寝付けんわで。

さっぱり話しにならんかった。



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次の日、アイツはしっかり話しかけてきた。

「ねえ、姫条君。今日喫茶店に寄らない??」

「いくいく!何があっても行くわ!!」

俺が昨日のことが原因で焦ったような言葉言ってもうたとき、アイツはくすくす笑って”変な姫条君!”といってた。

そのときの笑顔がめっちゃ可愛くて。
俺までニコニコ笑ってもうた。

けど、そんな笑顔を見せるたびに葉月のことも思い出してもうて。

前なら楽しめたような喫茶店の時間も、なんや上の空になってしもうた。

昨日のそないなことだけで上の空になってしまう俺も俺で、少し歯痒かったんや。


水無月、加羅。

・・・・コイツを、俺のものにしたい。


葉月と一緒に帰っているとこを見てからやと思う。

俺の無意識下に潜んでいた本能がむくむくと立ち上がってきた。


「・・・・なあ、水無月ちゃん。今日、俺の家来てくれへん?」

すると、水無月ちゃんは屈託のない笑顔でいいと答えた。


水無月ちゃん・・。俺を、男と思っているんか・・・?

もし、思っていないんなら・・・・



今夜、その考えをすっぱりかえてやらんとならんな。


俺は、たぶん今までで一番冷たい笑顔を作っていたと・・・思う。


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「わあ・・・・すごい・・・・。」

「ま、ここが一応俺の城ってとこやね。

カッコええやろ?」

水無月ちゃんは、俺の考えを知らないかのようにベッドに座った。

「なんか・・・姫条君の優しい感じが詰まってるみたい・・・。」


優しい?


俺を・・・??


俺はそんな水無月ちゃんを軽く押し倒した。

「・・・・・水無月。」

「ん?なあに?私、まだ眠くないよ?」


この状態でも、まだ気づかんか。


眠いとかの問題じゃないんや。


お前は、何でそないに鈍感なんや。


そないなことを思いながら俺は笑って水無月ちゃんに聞いた。

「なあ、水無月。刃物って・・・知ってるか?」

「うん。やだなあ、姫条君。私もう16歳だよ??」

水無月ちゃんはくすくすわらっとった。
俺は、黙って話を続けた。

「刃物は・・・・人のために便利なものやけど・・・。


人を傷つけることも出来るんや。」

「うん。そうだよね。・・・・それが、どうしたの?」

俺は、これまで作った笑顔では一番冷たく笑った。

「今の俺は・・・刃物や。


・・・・・後の方の、意味でな・・・。」

「えっ・・・んっ!!!」

俺は水無月ちゃんの言葉を塞ぐように荒っぽいキスをした。
俺の中にあった本能が、これで目覚めてしまった。

自分の中に、荒っぽい野獣を飼ってたんやな・・・。

そんなことを冷静に考えながら静かに水無月ちゃんの唇を舌で割る。
そして、舌を感覚で探り当て、からめとった。
そうすると、水無月ちゃんは少し喘ぎ声をあげた。

「んっ・・・ふあっ・・・。」

気づけば頬も桃色に染まってめっちゃ綺麗だった。

「水無月・・・。」

俺の声もなんや少し色っぽくなって、名前を呼んだ。
半ば夢心地で水無月ちゃんの唇を味わう。
甘い感覚が俺を襲った。


「わた・・・だ・・・・め・・・。」


たぶん、駄目とでも言いたかったんやろ。

でも、俺は知らへん。水無月ちゃんの事情がなんであろうが、知らへん。


俺の刃物を引き出しから出したのは・・・言われるまでもないお前や。


引き出しの鍵、見つけるまで・・・





今日はかえさへん。







「・・・・っ姫条君!!」



はっと。



そないな変なことを考えていたもう1人の俺は、水無月ちゃんのその声でひとまず逃げた。

そして、俺は今まで自分がやっていたことに・・・・ショックを受けたんや。
俺は水無月ちゃんの肩からすぐに俺の手を離して、俺はベットからでた。

「姫条く・・」
「あかん!!!俺に・・・・触るなっ!!!」



俺に触ろうとした水無月ちゃんの感覚と、俺の声にびくっとした水無月ちゃんの雰囲気が分かった。

「明日・・・・明日には・・・戻ってると思うんや・・。

だから、俺を・・・


俺を嫌わんといて・・・。」


必死でこんなことしかいえなかったんや。

半分の俺は、無理や。嫌われるといっていて。

半分の俺は、もしかして・・・大丈夫。といっているんや。


水無月ちゃんは、まだ黙っているんや。


俺の心をこんなに乱した水無月ちゃん。

本当に・・・辛いで。


頼むから、頼むから・・・・・・




俺を、嫌いにならないで・・・・。




「姫条君・・・・。とりあえず、私・・・・帰るね。」

遠慮そうな声で水無月ちゃんは言った。

まて。まってくれ。

俺は、振り絞るように声をだした。

「・・・・・答えは・・・?」


すると、水無月ちゃんは言葉をとめて冷静な声で喋った。

「あの・・・明日の朝・・・。私、まだ考えまとまってないから・・・・。」

一瞬、拍子抜けしたような感じやったけど、それは本当に”ああ、そうか。”と納得した。

「じゃあ・・・・また・・・・

明日。」

「・・・・うん。」



散々な、一日だった。



俺は、その日徹夜した。


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次の日。俺は水無月ちゃんをみかけた。

「・・・・水無月ちゃん・・・。」

すると水無月ちゃんは、屈託のない笑顔で

「あ、姫条君。おはよう♪」



・・・といった。

正直、俺は拍子抜けした。

もうとっくに嫌われてるとばかりおもっとったのに。

どうやら、刃物の傷はなかったらしい。

ということは・・・


ということは・・・・


水無月ちゃん・・・。俺は・・・・・



期待しても、いいんか・・・・?



俺は黙って水無月ちゃんの後についていった。


風が、水無月ちゃんの髪を揺らして、通り抜けていった。







こちらは、「葉月君と仲良くしてる主人公を見てちょっと焦る姫条君」をリクエストさせてもらいました♪
ちょっと強引な姫条君が見たかったので、とても嬉しかったです。
デンジャラス姫条、万歳!!






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